大野特集。

「や?まや?」

その光に照らされるほど、近くもないけど。
全く影響がないほど遠くもない。

真夏なのに。
夜特有の涼しい風が吹いてくる。
さくらいの髪が風で流される。
「さくらい・・・・」

眼鏡を外しても、キスしても、一回たりとも抵抗したことがない。
何を考えてるのか、わかりづらいさくらいだけど。
肩を押して、防波堤に押し倒した。
そのまま、口唇を合わせた。
チュッ、チュッと音を立てて、何回もキスをする。

いつも目を開けたままキスされているさくらいが目を閉じた。
はぁ、と、どちらからともなく息が漏れた。
「大野のご両親、どちらか、外国の方なのか？」
「は？うちの両親、どっちも純日本人」
「そうなのか・・・それなのに・・なんで大野は・・
キスが挨拶なんだ？」

「さくらい・・・もしかして、オイラがキスしてたの・・・
あいさつだと思ってたのか？」

きまり悪いのか・・・黙りこくったまま返事が来ない。
オイラも何も言わずにキスしてたけどさ・・・
「キスは・・そのまんまの意味だよ。
さくらいが・・好きだから」

眼鏡を外したままのさくらいは・・やっぱいい顔してる。
暗くても、見えるくらい顔を近づけると・・
さくらいは今度はすぐに目を閉じた。
キスをすると、口唇が待ってた、というように薄く開いてる。
中に入ると・・さくらいが応えた。
花火大会が終わっても。
しばらくオイラたちはそこにいた。
二人きりの時にしかできないこと・・してたから。
「今度、大野のご家族にご挨拶に行かないといけないな」

さくらい生真面目すぎる。

帰りにまた30分ドライブした。
車からの降り際。
さくらいに手を引かれた。

「大野」

呼ばれて振り向いたら、頬に手が当てられて。
さくらいからの初めてのキス。
するっと頬を撫でる手が離れて。
その手を見た。
さくらいの手・・・たった一つだけ惜しいことがある。
「さくらいさぁ・・・爪噛む癖よしなよ。
その癖が治ったら、手をスケッチするから」
さくらいの指先にはギザギザの爪。
だからなのか？
背中の爪あとがやけに痛むしさ。

?
END