ボクシングの秘密って知ってる?♪

ボクシング

ボクシング褐色の恋人

あだち充の漫画との出会いは「日当り良好」だった。
小学4年生ぐらいだったと思う。
それまでの漫画体験はドラえもん、Drスランプぐらいだった。
「日当たり良好」でハマり、丁度ブームに乗るカタチで「みゆき」「タッチ」はリアルタイムに読んだ。
その後は「北斗の拳」や大友克洋の「AKIRA」等、漫画の趣向が変わっていった。
で、この歳になって、「タッチ」より後の作品は全く読んでなかったので、大人買いで読んでない漫画を読破した。
中でも「クロスゲーム」と「H2」に感心した。
まずは「クロスゲーム」の感想から。

あだち充は「スポーツを絡めたラブコメ青春もの」のワンパターン作家というイメージである。
これは、ほぼ間違いはないのだけれど、「虹色とうがらし」「じんべえ」等いろいろと試行錯誤もしていたようだ。
でも、やはり真骨頂は「スポーツを絡めたラブコメ青春もの」になるだろう。
そして「スポーツを絡めたラブコメ青春もの」の集大成と思えたのが「クロスゲーム」
漫画家島本和彦が自分の過去をデフォルメした半ノンフィクション漫画「アオイホノオ」で「ナイン」の最終回を読んだ主人公に
「あだち充!!あいつ…野球漫画の描き方が…全然わかってないんだ……!!」
と言わせ、その後にそもそも野球漫画を描いていたわけではなくて、野球を用いて青春群像劇を描いていることを悟るシーンがある。
そう、度々スポーツを盛り込んではくるが、青春群像劇(恋愛含む)に重点が置かれている。
が、過去一番有名な「タッチ」は「ナイン」のような青春群像劇にまでは至っていない。
友情や青春というものが「クサい」という風潮の時代に移りゆく中のせいか、原田や孝太郎など味のある脇キャラはいるが、あまり掘り下げず、主人公の達也と南の成長と恋愛に重点が置かれていた。

「クロスゲーム」は青春群像劇とまではいかないまでも、脇キャラもある程度掘り下げて、丁寧に主人公の周りの人間たちを描いて作品に深みが出ていると思う。
キャッチャーの明石、スラッガーの東との友情もクサくならない程度に描かれているし、ヒロイン青葉の姉妹、一葉や紅葉は主人公やヒロインの魅力を引き出すエピソードにうまく使われている。
特に紅葉と主人公の関係が良かった。
主人公は紅葉にいつもさりげなく気配りしていて、ああ、ええ奴やなって読み手は感情移入できるし、紅葉も主人公の人間味を幼いながらにしっかりと感じて信頼を寄せている。
ヒロインにも野球をやらせる(というか主人公の師匠であり、幼少期から野球一筋)という設定も作品を良い方向に向かわせている。
タッチでは南が新体操だったり、ヒロインもなんらかスポーツをしている場合が多いが、結局あだち充は野球以外はうまくストーリーに活用できないし、努力の度合い等、深く演出できない。
(「KATSU!」ではボクシングを上手く描いていたと思う。またヒロインにも同じスポーツをやらせた場合の効果を「KATSU!」で感じ取って「クロスゲーム」に持ってきて活かしたように思う。)
ということで、主人公と同様にヒロインも野球を通して、心情を表したり、成長を見せたり、どういう人間なのかを掘り下げて、読み手に感情移入させることに成功していると思う。
特に女性読者がそうだと思うけど、あんまりタッチの南に感情移入して応援しようとは思わないでしょう。あだち充漫画のヒロインは大体、可愛くて、明朗活発、成績優秀で男にもモテるが、女友達からも慕われていてる。ひねくれた見かたをすれば、欠点なさすぎでちょっとイヤな女。特段に努力する姿が描写されたり、何か深い業を背負ってるっていう設定でもないので、感情移入しづらい。作画のかわいらしさとツンデレなキャラで、男性読者は単純にかわいいなぁと思ってしまったりするが。
しかし、青葉は野球部一走り込みをし、努力し、練習していて、才能もとんでもないのに、公式戦ではマウンドに立てない悲劇のヒロイン。感情移入できるヒロインになっている。
(大好きな姉を幼少期に失うという業も背負っている。主人公も同様である。南も和也を失うのだけれども、あまりそれを業として背負うような描かれ方はしていない。健気に見せないようにしてる感じはあるが。達也の方がどちらかというと背負っていく。ちゃんと競い合って南に選んでもらいたかった。けれど亡くなってしまった以上、勝負できない。自分は和也より南に相応しいのかというジレンマ。)
この設定は、ヒロインと同学年の野球部のレギュラー達が、自分達がアウトを重ね、なかなか点が取れない試合で、自分達より悔しくもどかしい思いをしているはずのヒロインを思い、奮起してなんとか塁に出ようとし、結果決定点をもぎ取るというちょっと、グッとくるシーンも生んでいる。
ところで、あだち充漫画は、明確に主人公とヒロインが存在し、なんか双方好きなんだろうけど、はっきりとした気持ちを見せないで話を進めて、やきもきさせ、ヒロインを狙うライバルや主人公を好きになる準ヒロインキャラを出したりするけど、最終的には主人公とヒロインはうまくいくっていうのが定石なので、やきもきしながらも心の底では安心して読める。
(これを裏切ってくれたのがH2!別途感想書きたいと思ってます)
更に付け加えると、お互いの気持ちが明確に描かれるのはラストというのがお決まりだが、実は話の最初からお互いに好意を持っているというのも定石。
タッチの南も和也が亡くなる前から達也の方が好きであるという描写が入っている。
クロスゲームも然りで、「大っ嫌い」が好きの裏返しであったという。。。
もしかしたら、若葉が亡くなる前から、嫌いだけど気になる奴と無意識ながら意識していたのかもしれない。
だから、勘のいい若葉は「でも獲っちゃダメだからね。」なんて冗談交じりに言っていたのかも。
あと、上で書いた準ヒロインにあたる「あかね」の登場時には、亡くなった若葉にそっくりという設定に、ああ、ご都合主義の準ヒロインか?と思ったりしたけど、タッチの新田妹みたいな脇役ではなく、自分の気持に正直じゃないヒロインと、若葉との思い出のために一歩踏み出せない主人公を後押しするとても意味のある重要なキャラだった。
という感じで各キャラクターがとても有機的につながり、活かされた、あだち充漫画の集大成的な漫画であると思う。

…水輝が主人公のライバル的キャラとして出てきたけど、このキャラは上手く活かされず、後半東雄平の方がもっと存在感のあるライバルとなったため、微妙な脇役で終わってしまっていたが。

2014/9/23追記

「大っ嫌い」が好きの裏返
であった、ということをラストシーンを交えて追記します。

第1巻は、第一部【若葉の季節】とされていて、幼少期の話、若葉が亡くなるまでが描かれており、この漫画においては長めのプロローグだ。
第2巻から、本編という形で、主人公達は中学生になっている。
そして、2巻の序盤早々に、嫌々、主人公の樹多村光の家に訪れていた青葉のところへ千田がやってきて、「どういう関係なんだ!?」に対して、青葉は「小さい時からの単なる顔なじみ」と前置きしたあと、大ゴマ、大吹き出しで

「この家のおじさんも、おばさんも、大好きだけど、こいつは大っ嫌い!」

と叫ぶ。

これがラストへ繋がるわけで、作者は結末をある程度、想定していたのか。。。

そして、最終巻、甲子園出場を賭けた決勝戦。水輝は応援には行かずに家で留守番。
猫のノモが落とした青葉の部屋のダンボールから日記を見つけて、思わず読んでしまう。
特定の好きな人は書かれておらず、樹多村光の悪口ばかり書いてあり、安心する。
しかし、「それにしても、よくもあんだけの悪口を…小・中・高…と、…どんだけ見ていたんだ、あいつのことを…」というセリフがある。

このあたりが、あだち充漫画の特徴。キャラクターの考えや、心情を直接本人に語らせない。
言葉にはしないが、表情や行動で、キャラクターの心情を読者に読み取ってもらう、または周りのキャラクターのセリフやエピソードの積み重ねで、読者に伝える。
決して難しくはない。あだち充は親切で、分かり易く気付かせてくれる。
上の例では

「それにしても、よくもあんだけの悪口を…小・中・高…と…」でも十分なところを
「…どんだけ見ていたんだ、あいつのことを…」まで付け加えている。

あだち充の親切心は相当なものである。

こういった表現は、思春期の微妙な心情を表現するのに有効であるし、主人公がセリフとして口に出すとクサくなってしまうことを回避している。また、読者に想像する楽しさを与えてくれる。

話を戻して、甲子園出場を決めたあと、東が「月島青葉を抱きしめろ」と樹多村光に言う。
光はバスの前で待つ青葉のところへ行き、無言で抱きしめる。
青葉はとっさに光の顔を引っ叩き、

青葉「あんたのことは大嫌いだって言ったでしょ!」
光 「ああ、知ってるよ。たぶん、世界中で一番……」
青葉「ずっと、ずっと、大っ嫌いだったんだから!」
光 「…知ってるよ。」

そして青葉は大泣きする。
光の思いがけない行動にいつもの青葉らしく無意識に引っ叩いたことで、張り詰めていた気持ちが一気に緩んだかのように。
意地っ張りで、負けず嫌いで、努力家で、弱音を吐くことなんかない青葉だが、特別に精神がタフというわけではない普通の女の子。朝からあかねの手術を見守り、無事を確認して試合観戦。気が張り詰めていたことだろう。
あまり細かく描写されてないが、青葉とあかねは姉妹のような親密な関係になっていた。そして、あかねの存在によって光への恋愛感情のようなものにようやく気付かされることとなった。
元々、大好きなワカちゃんを独占する光に嫉妬し、また無意識に光が自分とよく似ていることを感じ取って毛嫌いしていた。けれど気になる存在であったことは悪口といえど毎日のように日記に書かれていたことから明らかだ。
あかねの存在からだけでなく、野球を通しても光を認めていく。150kmを超える速球を投げるようになり自分が教えた変化球を青葉以上に変化させる光を見て「なめてたのかな?あいつのこと」と呟く。最後の夏に向けてとにかく走り込む光を見て「昔からあんなに頑張る人でしたっけ?」と呟く。恋愛というものに疎くて、それが恋愛感情というものなのかよく分からないながらも何かを感じている。
だから試合当日の朝、光のフォームチェックにつきあっているときに、
青葉「すきなんだよね、あかねさんのこと」
光「ああ」
青葉「ワカちゃんとどっちが?」
光「亡くなっちゃったやつとは比べられねぇよ」
青葉「じゃ、わたしとは?」
と聞くに至る。
前の晩にあかねと電話で話したと言っているので、いつものあかねらしく「若葉さんならこう言うはず」と何か的確なアドバイスを受けたのかもしれない。
そして光は「ウソついてもいいか?」と前置きしながらも、
「甲子園に行く!160km出す!そして、月島青葉が一番好きだ!」
と答えていたのである。
「好きか?」と訊かれているのに対して前段に二つあるのは、試合前で意気込みを語っているということもあるが、若葉の夢を実現することによって若葉との思い出のために他の人を本気で好きになることが出来なかった自分にケリを付け、青葉の理想も実現して本気で月島青葉を好きになるという気持ちを表していると思われる。
そして甲子園出場を決め、160kmを出した(いや、ここはあだち充作品らしく、はっきりと出たのかどうか分からなく描いてるが158kmも160kmも変わらないし、最後たまたま球速表示されなかったのなら気持ちの問題だ)。前二つを有言実行されたら「ウソついてもいいか?」の前置きは吹き飛び、最後の言葉が胸を突く。そしてあかねの無事も含め、感情が溢れ出したんだろう。

そして、ラスト。甲子園へ向かうため、二人で駅に向かう。青葉は電車に乗り遅れる!と光の手を引っ張り、ホームについても手を離さない。
「いつまで手をつなぐんだ?」と言う光に、青葉はそっぽを向きながら「嫌だったら離せばいいでしょ、そっちから。」と呟く。

そして青葉のモノローグ。

『そうなんだ。すべてお見通しだったんだ。』
『ワカちゃんを亡くした悲しみの大きさも、楽しかった思い出も、』
『どんなに意地を張っても、ウソをついても…』
『こいつだけは、ずっと前から……』
『やっぱり嫌なやつだ、世界中で一番……嫌なやつだ…』

『ウソをついても…』『ずっと前から……』の『…』のあとには何か言葉が続くはずだが、ここでも直接は言わせない。

直接的な表現で言えば「私が好きなことに気付いてたんだ」

これだと光が自惚れ過ぎな感じがしてしまうので、
「私がなんだかんだで、ずっと気になっていたことに、似たもの同士だということに、気付いてたんだ」
ぐらいが、妥当かな。
ここを、こんな風に解説してしまうのは、蛇足であだち充漫画の楽しみ方を汚してしまっているのかもしれないが。

『やっぱり嫌なやつだ、世界中で一番……嫌なやつだ…』
という言葉は意地っ張りな青葉らしい表現でこの作品にはぴったりだと思う。
(実際あまりにも相手になんでも見通されてたらち
ょっとイヤだろう。熟年夫婦なら以心伝心でいいかもしれないけど)

「嫌なやつだ」と呟きながらも二人手をつなぎ真っ直ぐ前を見ているラストシーンには頬が緩む。

ボクシングでさわやかライフ

日韓交流フィットネスイベントTo Fun Future vol.2
韓国で活躍されているミンゴンインストラクターと運動を通じて人が繋がり、健康になって国の壁を超えて明るい未来に繋げよう
そんな思いで企画したイベントです早いもので第2弾今回もジョイフィット岸和田様にて開催致します
第1弾が韓国のネットニュースに取り上げて頂きましたhttp://www.kns.tv/news/articleView.html?idxno=395235
第2弾はパートナー運動マーシャルボクシングエクササイズの二本立てです
初めての方でも楽しめる内容となっております是非遊びにお越しください
以下詳細です
9月8日(土)@ジョイフィット岸和田15:00〜15:50パートナー運動筋力トレーニングや有酸素運動を2人組で行います。圧倒的に時間が過ぎるのが早く、ワイワイ楽しみましょう。人類みな友達です!
16:10〜17:10マーシャルボクシングエクササイズ音楽に合わせて楽しくストレス発散しましょう韓国ボクシングチャンピオンのパンチをお見逃しなく。
参加費:無料※ビジター様 2,160円(施設利用料)が必要です
運動を通じて国の壁を超えましょうご参加心よりお待ちしております

関連記事