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この記事を書くのは、正直怖いです。
家造りにおいて、断熱材選びにこだわる施主さんは多いと思うからです。
私達なんて、アイシネンを使える工務店を探して今の会社にお世話になったくらいですから。
そして、ハウスメーカーにしても断熱材にしても、自分が選んだものは間違っていなかった、最高だ、と信じたい気持ちは、
施主なら誰でも同じだと思うからです。
今日の記事は、全く役に立たないかもしれないし、ただの独り言になるかもしれません。
こだわって選んだ アイシネン。
その施工精度において、非常に苦労し、辛い思いをした経緯は、過去記事にたくさん書きました。
すったもんだの結果、現在ではアイシネンについて困ることは何もないのですが、
ふと、思い出したことがありまして。
過去記事↓
で触れているのですが、
アイシネン初回施工時に 隙間がいっぱいあった、ちいの家。
当初、その隙間の大部分が、「ハンドタイプスプレー」で埋められたのです。
それは、「アイシネンではない」のです。
※2017/3/31 写真追加しました
写真は残っていたものの、商品名までわかりませんでした。
※ 2017/4/4 改変・追記: 日本ヒルティの正規品スプレーが使用されました。
※教えてくださった方、ありがとうございます!
上記過去記事にも書いたように、施工会社の社長や営業と現場で話し合い、そのことを指摘したら、
「ハンドタイプはアイシネンではない」と認め、
「アイシネンを使うと契約しているからには、
ぎりぎりの隙間まで『アイシネン』で充填しなくてはならない」と、
社長自らが言われ、
是正工事の際は、アイシネン以外のウレタンで埋められた部分も全て剥がして、
正真正銘、アイシネンのみで断熱気密施工が行われたのでした。
これがビフォーで
これがアフター
アイシネン以外の現場発泡ウレタンを選択された施主さん、
ハンドスプレー使われましたか
コンセント周りはどのように施工されましたか
過去記事にも書きましたが、アイシネンの場合は、電気配線は先施工です。
これが可能なのは、アイシネンが、一般の現場発泡ウレタン系断熱材と異なり、電気配線被覆を侵さないからです。
あと、アイシネンは自己消火性があるので、自らが火種にならないというのも安心材料です。
コンセントボックスは、アイシネン施工時に養生されていますが、横の余った穴から この写真のように入り込みます。後の電気工事の際に、中のアイシネンを掻き出します。
※コンセントを完成させる際、余分な配線を切り取り、先端の被覆を剥いてプレートに接続しますので、
写真に写っている断熱材と電気配線被覆中の銅線は、直接接することはありません。
ちなみに、電気屋さん曰く、「アイシネンがいくら電気配線を侵さないといっても、断熱材の中で結線することは絶対にNG」とのことです。グラスウールやロックウールでも同じことです。
結線部は露出となるうえ多少なりとも発熱するので、ここを「断熱材」で保温したら危ないですね。
ちいの家は、気密コンセントボックスを使っていません。
でも、アイシネンで気密を確保できています。
それだけでなく、
アイシネンの気泡はオープンセル構造ですが、連続気泡ではないので、毛細管現象が起こりません。
※ 2017/3/31 2013年当時に私がもらったパンフレットの写真4枚を追加しました。
また、経年劣化による収縮(←壁内の隙間)や加水分解も生じません。1986年から約30年の実績だそうです。
だから、防湿シートや気密コンセントボックスを使用しなくとも、壁内結露やコンセントボックス内の結露は起きないと考えられます。
念のため、外壁側に設置したコンセントの中を全部覗いてきましたが、乾燥していました。
ちなみに、連続セル構造の断熱材や、繊維系断熱材の場合、断熱材内で空気の対流・水の移動と滞留が生じると考えられます。防湿気密シートがなければ。
もしコンセント内に水があれば、電気配線の被覆の中にある銅線は錆びやすくなります。
ただ、銅の錆びは、腐蝕ではないですよね(硫化水素等の腐蝕性ガスは別)。
室内の場合、水の存在下で、酸素、二酸化炭素が存在すれば、緑青(塩基性炭酸銅)を発生します。
緑青は、銅の錆びですが、体には無害です。
ただ、銅と違い 電気を通さないので、銅線の結線部分に発生していると、
その部分の電気抵抗は上がると考えられます。
結果として発熱し、超高温になると、銅線断面が酸化銅へ変化します。
酸化銅も導電性がないので、電気抵抗が更に増し、火災の原因になるとも考えられます。
※ 考えられるけれど、実際に 結線部に緑青が発生した結果 火災にまで至る例があるのかは知りません。
どちらかというと、緑青より、コンセント内に水が存在することの方が短絡の危険があり 危ないように思います。
ここからは、マニアックになります。
興味のおありの方には、誤りや追記・削除すべき点があればご教授いただきたく思いますm(_ _"m)
現場発泡ウレタンって、何でできているのでしょうか。
一般的な、発泡ウレタンの材料(住宅の吹き付け断熱材以外も含む…例えば冷凍庫とか)は、
ポリイソシアネート化触媒 と、
水またはポリオール を、
第3級アミン化合物等の触媒を用いラジカル重合させて 合成されます。
※上の誤記訂正しました。ご指摘くださった方、ありがとうございます。
但し、大量にランダムに発泡するのでは性能が安定しないので、
重合度合いをコントロールする必要があります。
これを研究された結果、発見されたのが、リビングラジカル重合です。
それに適した第3級アミン触媒として、
1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(長いので以下)という脂肪族第3級アミンがあります。
他に、発泡剤として、かつては有機フロン化合物が用いられていました。
しかし、地球環境問題から、これらが代替フロンへ切り替えられました。
これらは今でも使われていますが、
代替フロンにも環境負荷限界があることや爆発リスクがあることから、
水のみを発泡剤として使用し、反応により発生する二酸化炭素を続く発泡に用いる技術が開発されました。
この場合、初期の発泡性が落ちます。
昔は銅を含む金属錯体を触媒として用いていましたが、
発泡ウレタンのように製品そのものが供用される場合、
製品中に金属が残存するため好ましくないとされ、
少量使用で大量発泡可能で 初期発泡の低さを克服できる触媒としても、第3級アミンが選ばれました。
(※隙間充填用吹付け断熱用スプレーには、液化石油ガスが用いられているものがあります。つまり、水発泡ではありません。100倍発泡でもありません。それが悪いとは言いませんが、広告と違う商品を黙って使われるのは気分のいいものではありません。)
が効果的な触媒となることは、少なくとも昭和30年代には知られていました。
また、は、銅線を腐食させない界面活性剤としても用いられています。
半導体ウエハーを洗浄するためです。
但し、腐食させない環境はpH8.0~13.0下に限定されるそうです。
話は戻りまして、
発泡ウレタン合成時の触媒として用いられた場合、
触媒ですので、完成した発泡ウレタン内にそのままとどまる可能性はあると思います。
そして、は、水、アセトン、エタノールに対し可溶性です。
例えばですが、100倍発泡の場合と2倍発泡の場合で、プレミックスに混合される触媒の重量比は異なると思われますが、
発泡した体積の違いの方が、完成した発泡ウレタン内に残存する触媒量への寄与は大きいと思いますが、どうなのでしょう。
ちなみに、一般に第3級アミンは揮発性ですが、も揮発するのかわかりません。
もし揮発するなら、完成した「断熱材」の中には、触媒が殆ど残っていないと思うのですが、どうなんだろう…
余談ですが、一般に、第3級アミン触媒は、吹き付け施工時、非常に揮発しやすく、
目に対する刺激性とアイレインボー現象が問題となります。
吸入してはいけないのは当然です(気道内で発泡したら大変)
そのため、アイシネン施工会社は「スプレイヤー認定制度」を設けています。
スプレイヤーは、目・鼻・口を厳重に防護します。
目は、ゴーグルの上からラップを張り付けます。
スプレーすると、ゴーグルにもアイシネンが付着し、視界が真っ白になるため、
そうなったらラップを剥がして、新たなラップを貼りつけ、再び作業するのです。
※2017/3/31写真追加しました。
当初、私は認定スプレイヤー制度を「上手に吹き付ける技術の認定」だと思っていたのですが、従業員や周囲の人を守るという趣旨が大きいのだと思います。
これも、とても大事なことだと思います。
もう一つ余談なのですが、
ウレタン樹脂のうち、イソシアネート基の三量体(イソシアヌレート)を含むものは、難燃性が非常に高いことから、イソシアヌレートフォームと区別して呼ばれます。
これを自社で合成できず、虚偽の試験体を用いて大臣認定不正取得を行ったのが、
東洋ゴムの大規模な不祥事です。
施主にとっては、建築物用免震ゴムでの不祥事が印象的ですが、
同社の過去4度にわたる大規模不正のうちの、一発目がこの大臣認定不正取得でした。
裏を返せば、ポリウレタンを用途に合わせて量産する技術というのは、それだけ高度で企業機密ということなのですね。
長々と書いてしまいました
現場発泡ウレタン吹き付け断熱を選択された施主さんに、何かご参考になることがあればと思いますが…