不確定性理論では説明しきれない加齢臭の謎
家路に向かうKeeくんの背中を眺めていると、Kee君は私の眼力レーザービームに撃ち抜かれまいと守備範囲広く振り向いて、
「あ、そうだ、そう言えば、パパがなんかね、Meちゃんの事をなんとかマザーだか、何だっけなぁ、とにかくなんとかって何回も言ってたよ!」
と言う謎の暗号を不意にそこそこの号速球で投げかけてきた。読み解くことで俺を超えて行け的な意味だと思う。
なんとかまざー? いや、もうね、分かるよ。わかる。言わんとすることは分かる。だって私、既にマザー的な立ち位置にいるっちゃーいる。もうたくさんのチルドレンがいる。小泉かってぐらいのチルドレンがいる。でもさ、志村、Kee君に敢えて言う?このタイミングで。っていうね。俺の嫁、マザーなんだよねっつって?それって「だと思った。」以外の複数回答あるの?って話。いや、でもさ、視点変えてみてよ。あんたらもファザーだよね。むしろ。とか思いつつ
「???」
って顔してると、
「ま、そんな感じ!とにかく、もうすぐ帰ってくるはずだから!」
「うん、Kee君、ありがとう。」
「はいよ~!じゃあね!おやすみ~」
となった。それから玄関のいつもの場所に車の鍵を置いた。
子供たちは既に眠っていて、家の中は静まり返っている。
私はテレビもつけずにソファーに座った。
夫は今、グリコに別れ話をしにキャバクラに行った?目が覚めた?本当に?小泉チルドレンって結局なんなの?もう本当に信じて良いの?冷蔵庫のプリン食べたの誰なの?
大丈夫なの?
その時、ガチャっと玄関が開いた。
え、もう帰ってきたの?もしかしてそこの裏の家の角のゴミ置き場あたりで捨て猫と並んでクラウチングスタート待機してたのかってぐらいのこのタイミングの良さ。
次の瞬間リビングのドアが開き、まだ少し赤い顔をした夫がズカズカと入って来て突然ソファーに座っている私の腕を取り、少女漫画並の強引さで加齢臭がムンムンする夫の胸元に引き寄せた。
ときめかないタイプの腕グイされてる中年のあたし。みたいな。ときめかない時点で介護とか介助とかいうたぐい。介護職員がおばあちゃん立つの手伝ったぐらいのアレ。
すると、突然
夫「ごめん」
え
冷蔵庫のプリン食べたのお前だったの?それとも、既に満腹でお腹すいてないや。の方のごめんなの?夕飯はカレーだったわけだけれど。
おのずと秀樹達はもう寝ているわけだけれど。
とか思うわけですよ。
で、それはタイミング的に合ってるのかと。開口一番謝っていいものなのかと。まだ何もバレてないはずでしょーに。
国語のテストしたら言葉足らずで三角ですよ。と。2点ひかれるよと、小一時間問い詰めたい所をぐっと堪えて、
機転とか、知恵とか、脳みそ使うてきな事出来ないのか。そこの気遣いこそが五輪招致に繋がるよと。安倍さんも言ってたり言ってなかったり。
なんなら私に気遣えと?
あの時のクリステルに習えと。お・も・て・な・せ。っつーことか。と小一時間。
なるほど。
「なにが?」
夫「悪かった。」
「だから何が?」
夫「許してもらえるなんて思ってない」
「.........」
そう言って夫は私をギュッと強く抱きしめた。夫は臭くて大きな体を震わせて泣いていた。(※身長180体重80)
私は事情を知っているからこそ、この事態を直ぐに理解出来たが、これ、何も知らなかったらほんとに
( ꒪Д꒪)はあ?
だよね?グッジョブKee君!
そうこうしているうちに
夫「許してくれる?」
とか、もう甘い蜜求めてやってきちゃってる。飴と鞭のターンの速さ。
恐らく多分2秒ぐらい前に「許してもらえるなんて思ってない」って聞いた。うん。聞いた。ここがアルプスのてっぺんだったらまだ山びこ帰ってきてる最中ぐらいのタイミング。
でもね、私は介助からの締め付けにあっていて、とりあえず、この状況を早々にどうにかしないとそろそろ堕ちるわけですよ。
だから、
「うん」
とか言うわけですよ。もう仕方なかったからねー。あー、なんにも聞こえないー。あーあーって言いながら両耳パンパンしちゃう。
そしたらですよ、
「お前はマザーテレサだよ」
はい、回答キタ━(゚∀゚)━!
みたいな。
急にマザーテレサって言われても先祖的な関わりないとあんまりピンとこないよね。なんか、やっぱり介護職員的なリスペクトかな?なんかボランティア界の神がかり的な偉人だった気もする。
ていうか、どう受け止めたらいいのかと。
で、複数回にわたって
「マザーテレサだよ、、」
ううっ....
「本当にマザーテレサみたいだ、、、」
ううっ....
「愛してるよ....」「大好きだよ....」「ごめん、本当にごめん」
とか言ってる訳。真夜中に酒に酔って。
これは、もしや
口説かれてるのか?
私の間違った知識だと、介護界の大御所マザーテレサ。お前は介護界の大御所だよって泣きながら臭くてでかい男に言われても口説き堕とされにくいんですよ。
とか、そんなこんなで夜は老ける。
その日、私は夫のベッドで眠った。
加齢臭に一目ぼれ
その夜は高校生の息子が夫用に捌いた秋刀魚の刺身を食べた。
息子は「旨い!旨い!」と言ってパクパク食べてくれた。
それからいつも通りの夜を過ごし、遊びに(呑みに)行った夫の帰宅を待つことも無く下の子ども達と一緒に眠りについた。
( ゚∀ ゚)ハッ!
と起きたら夜中の2時だった。眠りが浅いのかしらねぇ。歳かしらぁ、やだわぁ
で、ふと見ると隣では夫がいつの間にかスヤスヤと眠っていた。
すごく静かに眠っている。
(=_=)...
普段寝ている時の奴は地響きさせるぐらいのイビキand睡眠時無呼吸症候群と信じられない加齢臭を放つスキルがある。
しかし、今のコイツは死んだように静かにスヤスヤ眠っている。(寝たフリではない)
私はそんな夫が何だか腑に落ちなかった。これは、女の勘なのだろう。
そして夫のベッド脇に置いてあるiPhoneに手を伸ばした。
コソッと取り上げてリビングにコソコソっと移動した。
バカ夫はロックをかけたりするスキルは当時はなかった。たぶん、本当にやり方がわからなかったのだと思う。
ちなみに、クソバカボケナス夫は携帯二台持ちで、1台はガラケー(完全仕事用)と家族だけのためのiPhoneを所持している。
iPhoneはいづれ中学生になる息子に引き継ぐつもりでいたので、電話番号など、家族以外には決して教え無いことにしていた。夫ももちろん同意していた。
だから、中身はたかが知れていたけど、一応覗いてみた。
ら、
あらららら...
LINEに未読1あるわ。
(ノ∀`)アチャー
何もためらわず既読((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチポチポチポチポチ
するとグリコとかいうお菓子のメーカーみたいな名前の奴から
無理しないとねっ💗
というハート付きのメッセージが来ていた。
ほほぉ〜ん
なんか無理する事案でもあんの。( ´_ゝ`)フ-ン(´・∀・`)ヘー(棒)
ん、待てよ、という事は、今日はクソバカボケナスはコイツと会っていたのか?
一気に色んなことがグルグル頭を駆け回る。やましいものを見つけた事で、興奮状態の私の頭は真夜中にフル回転をし始めた。
そして見られても何の問題もないと思ってるのか、油断しっぱなしでリビングに置き去りにされているバカ夫のガラケーに手を伸ばし、S君から電話来てさぁ...という19時頃の着信履歴を調べてみた。
すると、おや?登録されていない番号から1件着信履歴が残っていた。
なんだろ?この番号がグリコの電話番号なのだろうか?
と思った瞬間 !!!( ゚д゚)ハッ!!!! となってクソ夫のiPhoneの電話番号をチェックしてみたら、なんと、なんと、あろうことか、あのクソボケナスう〇こ野郎は、自分のiPhoneから、自分のガラケーの音を鳴らして、さもS君から電話が来ていたという演出を自作自演していた乙野郎だったのだ
そしてそのドキドキの自作自演はリビングの隣の部屋で決行されており、秋刀魚のYoutubeを必死に見ていた私にはお前の馬鹿な演技は1ミクロンも届いていなかったのだ
ばかなの?ねえ?ねえ?
さて、どうしてくれよう。コイツ、正式にバレた浮気は2回目だ。
思い立ったが突撃日の私には、クソボケカスゴミ夫を今すぐ蹴り起こして正座させてブチギレることも楽勝なのだが、今回はとりあえずもう暫く泳がせることに決めた。
夫のiPhoneのGPSをONにして抜き足さし足コソコソと寝室に戻ると、警戒心MAXのクソボケカスバカ夫はベッドの上で体を起こしていた。
(ノ∀`)アチャー